
BASSONICで聴く映画 第20回、今回は第71回カンヌ映画祭パルムドール作品「万引き家族」です。タイトルから、もっと家族で万引きを行うような作品かと思ってました。たとえが古いですが「踊る大捜査線 the movie2 レインボーブリッジを封鎖せよ」に出てくる幸せそうなスリ一家のようなものを想像してましたが、だいぶ違いました。
東京の下町でくらす、ある家族。父と11歳くらいの息子が万引きをするところから話が始まります。
まさに社会の底辺で生きる家族という感じで、構成としては、父、母、息子、母の妹、そして祖母。一応父母共働きで祖母の年金もある、これで万引きしてたらバレるリスクにメリットが見合わないなぁと思って見ていたんですが、なにか事が起こるたびに("りん""を"保護"するのもそうですが)、それやったら犯罪だよ!って方向に舵を取ってしまう。なんでだろうと引っかかりながら見ていました。
最後の方で、その判断をしてしまう原因がわかりますが、でもこの一家幸せなんですね。"保護"された"りん"も、"保護"されてなければ両親のネグレクトにより凍死してた可能性があったので、最後本当の家族と暮らすようになっても生きていてくれて、ほんの少しホッとしました(あれはあれで、偽の家族に比べると地獄なので、もやもやしますが)し、ほとんどの家族がなんらかの犯罪に手を染めていつつも、"りん"も含めて家族愛があり、家族で一緒にいることに幸せを感じています。
結局、祖母の死とともに、様々な不正や問題があきらかになってしまい、"家族"はバラバラにさせられ物語は終わるのですが、偽の家族がいなければ"りん"は死んでいたかもしれないし、つかの間の幸せを得られることもなかったことを考えると、"人はパンのみにて生くるものにあらず"ではないですが、血が繋がっているだけでは家族とはいえない、でも"愛"があるだけでもうまく行かない。そんなジレンマを突きつけてきます。
この映画ネタバレを避けると、ストレートな感想が書きにくいのが難しいところですが、家族について考えさせられる非常によいストーリーでした。
さて音です。
- オープニングから、音量が大きいわけでもないのにBGMのシンバルとピアノが生々しく印象的でした。とはいえ音響自体はどちらかといえば控えめな感じで、なぜか音楽だけ妙に良いと思ったら、細野晴臣氏でした。シンプルな音で感動させる手腕は、流石と言わざるをえません。
- 要所要所でかかるBGMのギターが弦を引いてる感じがよく出ています。さらに普通のスピーカーでは聞こえにくいとは思いますが、曲によってギターをドラム代わりに手で叩いているような音が聞こえます。これは良いスピーカーでないと潰れてしまうか、変に強調されると思います。
- 樹木希林さんや、柄本明さんなどかすれた声の多い映画ですが、潰れた声なのかそうでないのか、こうした微妙な音はなるべく良い音で聞いてほしいところです。BASSONICは、口径故に人の声が最も上手く再生できますので、このような芝居はお任せください。
いかがでしたでしょうか?パルムドールを取ったタイトルといえど、ネガティブな印象をうける題名なので(それはそれで間違いではありませんが)、敬遠しがちでしたが見てよかったです。
それでは良い音をお楽しみください。